2005

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草案<一部>

鳩山由紀夫(一部)

HATOYAMA Yukio

「鳩山由紀夫 新憲法試案(一部・ブログ版)」1
2005年


前文(抜粋)

この憲法は、明治二十二年憲法によって創始された議会主義と政党政治の伝統を受け継ぎ、昭和二十二年憲法によって確立された国際協調と平和主義の理念をさらに発展的に継承するものである。

日本国民は、平和と自由と民主主義の恵沢を全世界の人々とともに享受することを希求し、世界、とりわけアジア太平洋地域に恒久的で普遍的な経済社会協力および集団的安全保障の制度が確立されることを念願し、不断の努力を続ける。

日本国民は、この国の長い歴史に培われた伝統と文化を受け継ぎ、豊かな自然環境と美しい国土を守り、後世に伝えるよう努める。

第1章 総則

1条〔主権及び政体〕
日本国の主権は、日本国民に存する。
2 日本国は、国民統合の象徴である天皇を元首とする民主主義国家である。
3 日本国民の要件は、法律で定める。

第2条〔人間の尊厳及び基本的人権の不可侵〕
人間の尊厳は最大限尊重されなければならない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利であり、日本国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。

第3条〔最高法規〕
この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。

第4条〔憲法遵守の義務〕
天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し遵守する義務を負う。

第5条〔国旗、国歌、元号〕
国旗、国歌、元号は、法律で定める。

第6条〔公用語〕
日本国の公用語は、日本語である。

第2章 天皇

第7条〔皇位〕
皇位は、世襲のものであって、国会の議決した皇室典範の定める継承順位に従い、皇統に属する男子又は女子が継承する。

第8条〔天皇の任命権〕
天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。
2 天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。
(3 憲法裁判所長官)
(4 各州長官)

9〔天皇の国事行為〕
天皇は、内閣の助言と承認により、左の国事に関する行為を行う。天皇の国事に関する行為の責任は内閣が負う。
一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
二 国会を召集すること。
三 衆議院を解散すること。
四 国会議員の選挙の施行を公示すること。
五 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。
六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
七 栄典を授与すること。
八 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
九 外国の大使及び公使を接受すること。
十 国賓を接遇すること並びに友好親善のため諸外国を訪問すること。
十一 儀式を行うこと。
2 天皇は、法律の定めるところにより、国事に関する行為を委任することができる。
3 皇室典範の定めるところにより摂政を置くときは、摂政は、天皇の名でその国事に関する行為を行う。

第10条〔財産授受の制限〕
皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が、財産を譲り受け、若しくは賜与することは、国会の議決に基かなければならない。

第○章 平和主義及び国際協調

第○条〔侵略戦争の否認〕
日本国民は、国際社会における正義と秩序を重んじ、恒久的な世界平和の確立を希求し、あらゆる侵略行為と平和への破壊行為を否認する。
2 前項の精神に基づき、日本国は、国際紛争を解決する手段としての戦争および武力による威嚇又は武力の行使は永久に放棄する。

第○条〔国際活動への参加〕
日本国は、国際連合その他の確立された国際的機構が行う平和の維持と創造のための活動に積極的に協力する。

第○条〔主権の移譲〕
日本国は、この憲法の定める統治の基本秩序に反しない限り、法律により、主権の一部を国際機構に移譲することができる。
2 日本国は、国際社会の平和と安定に寄与するため、集団的安全保障活動に参画するときは、法律により、主権を制限することができる。

第○条〔国際法の遵守〕
日本国が締結した条約および確立された国際法規は、誠実に遵守する。

第○章 安全保障

第○条〔自衛権〕
日本国は、自らの独立と安全を確保するため、陸海空その他の組織からなる自衛軍を保持する。
2 自衛軍の組織及び行動に関する事項については、法律で定める。

第○条〔内閣総理大臣の指揮統制権限〕
自衛軍の最高の指揮監督権限は内閣総理大臣に属する。

第○条〔国会の承認〕
内閣総理大臣が、自衛軍の出動を命ずるときは、国会の承認を必要とする。

第○条〔大量破壊兵器の不保持〕
核兵器、生物化学兵器をはじめとする大量破壊兵器は、開発、製造、保有することを禁ずる。
 

第○条〔徴兵制の否定〕
日本国民は、自衛軍への参加を強制されない。

第○章 市、圏及び国

第○条〔地方自治体の構成〕
地方自治体は、基礎自治体としての市、及び広域自治体としての圏で構成する。

第○条〔補完性の原理〕
市、圏及び国は、補完性の原理に基づき、住民の創意と自発に基づく自治活動を尊重し、その事務を分担する。

第○条〔市の権限〕
市は、この憲法の規定により国の専属的立法権限とされた事項を除くほか、その地域の事務に関する立法の権限を有し、当該事務を自主的に行う権能を有する。
2 市は、課税と徴税に関する自主権を有し、自ら必要な財源を確保することができる。

第○条〔圏の権限〕
圏は、国の専属的立法権限に属する事項を除くほか、域内各市の相互調整に関する事務その他その地域の事務のうち市が行うことができない事務に限り、立法の権限を有し、当該事務を自主的に行う権能を有する。
2 圏が、その任務を遂行するために必要とする財源は、圏議会が(域内各市の人口に応じて)割り当てるところに従い、域内各市が拠出する財政分担金によるものとする。

第○条〔国の権限〕
国は、国家の存立にかかわる事項、国家として対外的に代表しなければならない事項及び全国的な基準が必要な事項に関する立法の権限を有し、この憲法の条規に従い、その事務を行う。

第○条〔国の専属的立法権〕
左に掲げる事項は、国の専属的な立法権限に属する。
一 天皇及び皇室に関すること
二 外交及び安全保障に関すること
三 国会議員選挙に関すること
四 司法並びに民事及び刑事に関する基本原則に関すること
五 国の機関の組織及び財政に関すること 
六 通貨、公定歩合、公正取引の確保、金融、資本市場、貿易、物価の統制、工業規格、度量衡、知的所有権に関すること
七 国籍、税関、出入国管理及び旅券に関すること
八 海難審判、海上保安、航空保安に関すること
九 基礎的な公的年金に関すること
十 全国的な電波監理に関すること
十一 医療従事者の資格に関する基準及び薬品の規制に関すること
十二 国勢調査等の全国的な統計調査に関すること
十三 国家賠償責任に関すること

第○条〔競合的立法権〕
左に掲げる事項は、市及び圏と国の競合的立法権限に属する。
一 治安の維持及び大規模災害への対処に関すること
二 税制に関すること
三 教育に関すること
四 公的保険及び生活保護並びに労働基準に関すること
五 基本食糧の確保及び資源エネルギーの確保に関すること。
六 重要な文化財の保護及び環境の保全に関すること
七 全国を対象とする骨格的かつ基幹的な交通通信基盤施設の整備及び管理に関すること
八 全国的な気象事業に関すること
九 郵便に関すること
十 道路交通、海上交通及び航空交通に関すること
十一 土地取引に関すること
十二 伝染病に対する措置に関すること
2 競合的立法の事項においては、国はその全国的な基準について定めるものとし、市及び圏は、国が法律において設定した全国的な基準について、それぞれの地域の特性に対応できるよう、その具体化を委任される。又必要に応じて基準等の付加、緩和ができる。

第○条〔国の財政調整責任〕
国は、各市及び各圏の間の財源の格差を調整するため、必要な措置を講じなければならない。

第○条〔係争処理制度〕
国と地方自治体又は地方自治体相互の係争を処理するため、係争処理機関を設けるものとする。
2 前項の規定は、裁判所(含む憲法裁判所)に訴えを提起することを妨げるものではない。

第○章 市及び圏の組織

第○条〔憲章の制定〕
市及び圏は、基本法としての憲章を定めるものとする。憲章では、この憲法が定める統治の基本原則に従い、その立法と行政の組織について定める。
2 憲章の制定及び改廃は、市議会又は圏議会の議員の三分の二以上の賛成による可決、又は議会の総議員の過半数の賛成による発議に基づく住民投票において有効投票の過半数の賛成による承認を得なればならない。

第○条〔市の立法〕
市の立法は、市議会が行う。
2 市議会は、予算を定め、決算を承認することその他市憲章が定める事項について議決する。
3 市議会は、市の行政が適正に行われることを確保するため、市行政に対する調査権を有する。
4 市議会の議員は、その市の住民が直接選挙する。

第○条〔市の行政〕
市の行政は、市行政委員会が行う。
2 市行政委員会の長を市長と称し、住民が直接選挙により選任する。
3 市長の任期は四年とし、同一の人物が継続して十二年を越えて務めることはできない。
4 市行政委員会の委員は、市長が任免する。

第○条〔圏の立法〕
圏の立法は、圏議会が行う。
2 圏議会は、予算を定め、決算を承認することその他憲章が定める事項について議決する。
3 圏議会は、圏の行政が適正に行われることを確保するため、圏行政に対する調査権を有する。
4 圏議会の議員は、その域内に属する市がそれぞれの憲章に基づいて選出する。

第○条〔圏の行政〕
圏の行政は、圏行政委員会が行う。
2 圏行政委員会の長を圏知事と称し、圏議会議員のなかから圏議会が任命する。
3 圏知事の任期は四年とし、同一の人物が八年を超えて務めることはできない。
4 圏知事は、圏行政委員会の委員を任免することができる。ただし、圏行政委員会委員の過半数は圏議会議員でなければならない。
5 圏知事は、圏議会で不信任決議案が可決されたときは、十日以内に圏議会を解散しない限り、辞職しなければならない。

第○条〔住民投票〕 
市及び圏の住民は、憲章の定めるところにより、住民投票により、その市及び圏の決定に直接参加することができる。

第○条〔監査、行政監視、情報公開制度〕
市及び圏は、憲章の定めるところにより、連結決算と発生主義に基づく公会計の制度を設け、あわせて議会が承認した第三者による会計監査機関を置くものとする。
2 市及び圏は、憲章の定めるところにより、その行政委員会の活動に関して、住民の申立てに基づいて調査し、議会に報告するとともに、行政委員会に対して必要な是正措置を講ずるよう勧告する行政監視機関(オンブズマン制度)を置くことができる。
3 市及び圏は、憲章の定めるところにより、その議会及び行政委員会の事務等に関する情報について住民から開示を求められたときは、これを公表しなければならない。

第○章 政党

第○条〔政党〕
日本国民は、自由に政党を設立する権利を有する。
2 政党は、国民主権と民主主義の原則を尊重しなければならない。
3 政党たる要件は、法律によって定める。

第○条〔政党助成〕
国は、法律の定めるところにより、政党運営に必要な資金を補助する。
2 政党は、法律の定めるところにより、その政治活動に関する資金の収支を公開しなければならない。

第○条〔内閣総理大臣候補者の明示〕
政党は、国会議員総選挙に際しては、内閣総理大臣候補としての党首及びその施政の基本方針を明示して臨まなければならない。

第○章 国会

第○条〔国会の地位〕
国の立法権は国会に属する。

第○条〔一院制〕
国会は、全国民を代表する、選挙された議員で組織する一院で構成する。
2 国会議員の定数は、法律で定める。

第○条〔議員及び選挙人の資格〕
国会議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。但し、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によって差別してはならない。

第○条〔国会議員の任期〕
国会議員の任期は四年とする。但し、国会解散の場合には、その期間満了前に終了する。

第○条〔国会議員の選挙〕
国会議員の選挙方法及び選挙区、その他国会議員の選挙に関する事項は法律で定める。

第○条〔議員の歳費〕
国会議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。

第○条〔議員の不逮捕特権〕
国会議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。

第○条〔議員の発言表決の無答責〕
国会議員は、議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。

第○条〔通年国会〕
国会の会期は、四月一日から、翌年の三月三十一日までとする。但し休会期間をおくことが出来る。
2 国会が解散された場合は当期の会期はその日をもって終了するものとし、総選挙後に召集された国会の会期は、その召集された日から三月三十一日までとする。

第○条〔総選挙〕
国会が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、国会議員の総選挙を行い、その選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければならない。

第○条〔資格争訟〕
国会は、その議員の資格に関する争訟を裁判する。但し、議員の議席を失はせるには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。

第○条〔議事の定足数と過半数議決〕
国会は、その総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。
2 国会の議事は、この憲法に特別の定めのある場合を除いて、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。

第○条〔法律、予算、条約等の議決〕
法律案は、国会で可決したときに法律となる。
2 予算及び条約締結の承認には、国会の可決を要する。

第○条〔会議の公開と会議録〕
国会の会議は、公開とする。但し、出席議員の三分の二以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができる。
2 国会は、その会議の記録を保存し、秘密会の記録の中で特に秘密を要すると認められるもの以外は、これを公表し、且つ一般に頒布しなければならない。
3 出席議員の五分の一以上の要求があれば、各議員の表決は、これを会議録に記載しなければならない。

第○条〔役員の選任及び議院の自律権〕
国会は、議長その他の役員を選任する。
2 国会は、会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、又、国会内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。但し、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。

第○条〔憲法裁判所裁判官の指名〕
憲法裁判所裁判官の指名には、出席議員の三分の二以上の多数による議決を要する。

第○条〔議院の国政調査権〕
国会は、国政に関する調査権を有する。これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求するときは、総議員の三分の一以上の議員の賛成を要する。

第○条〔憲法裁判所への提訴〕
国会が、法律、条約、命令、規則又は処分について、その憲法適合性を判断するため、憲法裁判所に提訴するときは、総議員の三分の一以上の議員の賛成を要する。

第○条〔会計検査の要求〕
国会が、具体的な国の事業について、その予算の執行が適正に行われているかについて会計検査院に調査を求めるときは、総議員の三分の一以上の議員の賛成を要する。

第○条〔国務大臣の出席〕
内閣総理大臣その他の国務大臣は、国会に議席を有すると有しないとにかかわらず、何時でも議案について発言するため国会に出席することができる。又は、答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。

第○条〔弾劾裁判所〕
国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、国会の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。
2 弾劾に関する事項は、法律でこれを定める。

第○条〔緊急事態宣言下における議員資格の特例〕
内閣総理大臣が国家緊急事態を宣言したとき、国会議員の任期が満了又は解散している場合には、内閣総理大臣がこの憲法及び法律の規定に従って国家緊急事態宣言を解除するまでの間、前任者の任期を延長することとする。

第○章 内閣

第○条〔行政権の帰属〕
国の行政権は、内閣総理大臣に属する。
 

第○条〔内閣総理大臣の指名〕
内閣総理大臣は、国会議員の中から、総議員の過半数の支持を得たものを指名する。この指名は、他のすべての案件に先だって行う。

第○条〔内閣の組織と責任〕
内閣総理大臣は、行政権を執行するため内閣を組織し、その構成員たる国務大臣、及び内閣総理大臣を補佐するために法律で定められた官吏を任免する権限を有する。
2 内閣総理大臣は、施政の基本方針を定め、これについて責任を負う。国務大臣は、内閣総理大臣の基本方針の範囲内において、独立してかつ自らの責任において、その所轄する事務を行う。
3 国務大臣の過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない。
4 内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。
5 内閣総理大臣は、事故あるときに備え、あらかじめその職務を代行する国務大臣を指名しておかなければならない。
6 内閣総理大臣は、行政権の行使について、国会に対して責任を負う。

第○条〔内閣総理大臣の職務〕
内閣総理大臣は、議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告する。
2 内閣総理大臣は、その施政の基本方針に基づき、行政各部を指揮監督する。
3 内閣総理大臣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行う。
一 法律を誠実に執行し、国務を総理すること。
二 外交関係を処理すること。
三 条約を締結すること。但し、事前に、時宜によっては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。
四 法律の定める基準に従い、官吏に関する事務を掌理すること。
五 予算を作成して国会に提出すること。
六 法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。
七 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること。

第○条〔不信任決議と解散〕
内閣総理大臣は、国会で不信任決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときにのみ、天皇に国会の解散を助言することができる。但し、十日以内に国会が解散されないときは、内閣総理大臣はその他の国務大臣とともに辞職しなければならない。
2 内閣総理大臣は、国会で、内閣総理大臣に対して国務大臣の罷免を要請する決議案が可決されたときは、その国務大臣を罷免しなければならない。

第○条〔内閣総理大臣の欠缺又は総選挙施行による辞職〕
内閣総理大臣が欠けたとき、又は国会議員総選挙の後に初めて国会の召集があつたときは、内閣総理大臣及びその他の国務大臣は辞職しなければならない。

第○条〔辞職後の職務続行〕
前二条の場合には、内閣総理大臣又は内閣総理大臣の職務を代行する国務大臣が、あらたに内閣総理大臣が任命されるまで引き続きその職務を行う。

第○条〔法律及び政令への署名と連署〕
法律及び政令には、すべて主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。

第○条〔国務大臣訴追の制約〕
国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない。但し、これがため、訴追の権利は、害されない。

第○条〔緊急事態への対処〕
内閣総理大臣は、国家の存立と国民の生命の安全が危殆に瀕する恐れがある事態に際しては、法律の定めるところにより、国家緊急事態を宣言し、必要に応じて緊急命令を発布することができる。
2 内閣総理大臣が、国家緊急事態を宣言したときは、十日以内に国会の承認を得なければならない。
3 国家緊急事態宣言に際しては、その区域を定め、その期限を予め明示しなければならない。
4 国家緊急事態宣言の有効期間は、最大三十日とする。但し、国会の事前承認により、これを延長することが出来る。
5 内閣総理大臣は、国会が国家緊急事態を承認しなかったとき、又は国会が国家緊急事態の終了を議決した場合には、当該緊急措置を終了しなければならない。

第○章 国民投票

第○条〔内閣総理大臣の国民投票実施権〕
内閣総理大臣は、とくに必要と認めるときには、法律案又は条約案について、その議決の前に国民投票に付することができる。 但し、予算および租税に関する法律案については国民投票に付することはできない。

第○条〔国会の国民投票の要求権〕
内閣総理大臣は、国会の総議員の二分の一以上の議員の要求があるときは、法律案又は条約案について、その議決の前に国民投票に付さなければならない。

第○条〔国民投票結果の拘束力〕
国民投票に付された提案は、有権者の過半数が投票に参加し、有効投票の過半数の賛成を得たときに、可決されたものとする。
2 国会および内閣総理大臣は、国民投票の結果に拘束される。
3 国民投票の方法その他必要な事項は法律で定める。

第○章 憲法裁判所

第○条〔憲法裁判所の違憲立法審査権〕
憲法裁判所は、条約及び法律が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する。

第○条〔地方自治体と国の係争処理権限〕
憲法裁判所は、地方自治体と国又は地方自治体相互の権限に関して、地方自治体の長又は内閣総理大臣から提訴があったときは、その当否を決定する権限を有する。

第○条〔違憲立法審査の対象〕
憲法裁判所は、左の場合に、憲法に適合するかしないかを審理し、決定する
一 条約及び法律の憲法適合性について、内閣総理大臣又は国会からの提訴があったとき
二 具体的訴訟事件で裁判所から、憲法適合性について判断を求められたとき
三 具体的訴訟事件で当事者が最高裁判所の憲法判断を不服として提訴したしとき

第○条〔憲法裁判所の判断の効力〕
前条各号に関する憲法裁判所の判断は、国民と地方自治体及び国のあらゆる機関を拘束する。

第○条〔選任方法、定員、任期、停年〕
憲法裁判所の定員は九人とし、三人づつをそれぞれ国会、内閣総理大臣、最高裁判所が指名する。
2 憲法裁判所の長たる裁判官は、互選により指名する。
3 憲法裁判所の裁判官の任期は六年とし、再任されない。

第○条〔憲法裁判所裁判官の資格〕
憲法裁判所の裁判官は、識見の高い、法律の素養のある、年齢四十歳以上の者の中からこれを指名しなければならない。
2 憲法裁判所の裁判官は、満七十歳に達したときには退官しなればならない。

第○条〔規則制定権〕
憲法裁判所は、審理に関する手続、裁判所内部規律及び事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。

第○条〔身分保障〕
憲法裁判所裁判官は、その良心に従い独立してその職権を行い、この憲法にのみ拘束される。
2 憲法裁判所の裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。憲法裁判所裁判官の懲戒処分は、行政機関がこれを行うことはできない。
3 憲法裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。

第○章 司法

第○条〔司法権の機関と裁判官の職務上の独立〕
司法権は、憲法裁判所が所管する事項を除き、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
2 特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行うことができない。
3 すべて裁判官は、その良心に従い独立してその職権を行い、この憲法及び法律にのみ拘束される。

第○条〔最高裁判所の規則制定権〕
最高裁判所は、訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。
2 検察官は、最高裁判所の定める規則に従はなければならない。
3 最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限を、下級裁判所に委任することができる。

第○条〔裁判官の身分の保障〕
裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒処分は、行政機関がこれを行うことはできない。

第○条〔最高裁判所の構成、任期、定年〕
最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣総理大臣がこれを任命する。
2 最高裁判所の裁判官は、任期を十年とし再任を妨げない。
3 最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達した時に退官する。
4 最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。

第○条〔下級裁判所の裁判官〕
下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によって、内閣総理大臣がこれを任命する。その裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる。但し、法律の定める年齢に達した時には退官する。
2 下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。

第○条〔対審及び判決の公開〕
裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行う。
2 裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には、対審は、公開しないでこれを行うことができる。但し、政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第 章で保障する国民の権利が問題となっている事件の対審は、常にこれを公開しなければならない。

第○章 財政

第○条〔財政国会中心主義〕
国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。

第○条〔健全な財政運営〕
国は、健全な財政の維持と運営に努めなければならない。
2 国の歳出は、公債または借入金以外の歳入を以って、その財源としなければならない。やむを得ず公債または借入金をなすときは、事前に国会の承認を得るとともに、その償還についての計画を国会に提出し、承認を得なければならない。

第○条〔課税の要件〕
あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。

第○条〔国費支出及び債務負担の要件〕
国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基くことを必要とする。

第○条〔予算の作成〕
内閣総理大臣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。
2 内閣総理大臣が、多年度にわたる支出を要すると認める事業については、その年限を定め、継続予算として、国会の審議を受け議決を経なければならない。

第○条〔予備費〕
予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基いて予備費を設け、内閣総理大臣の責任でこれを支出することができる。
2 すべて予備費の支出については、内閣総理大臣は、事後に国会の承諾を得なければならない。

第○条〔皇室財産及び皇室費用〕
すべて皇室財産は、国に属する。すべて皇室の費用は、予算に計上して国会の議決を経なければならない。

第○条〔公の財産の用途制限〕
公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。

第○条〔国の会計および決算〕
国は、発生主義に基づく公会計の制度を設けなければならない。
2 国の収入支出の決算は、内閣総理大臣が、次の年度にすみやかに国会に提出しなければならない。

第○条〔会計検査院〕
国の予算が適正に執行されているかを調査し、また国の収入収支の決算を検査するために、会計検査院をおく。
2 会計検査院は、毎年国の決算を検査し、国会および内閣総理大臣に報告する。
3 会計検査院は、国会から調査を求められた事項について、改善を要すると認められたときは、すみやかに国会に報告するとともに、内閣総理大臣に対してその改善を命ずることができる。
4 会計検査院の組織及び権限は、法律で定める。

第○条〔財政状況の報告〕
内閣総理大臣は、国会及び国民に対し、定期に、少くとも毎年一回、国の財政状況について報告しなければならない。

第○章 補則

第○条〔施行期日等〕
この憲法は、公布の日から起算して一年を経過した日から施行する。ただし、第○条から第○条については、公布の日から三年を経過した日から施行する。
2 この憲法を施行するために必要な法律の制定およびこの憲法を施行するために必要な準備手続は、前項の期日の三ヶ月前に終了しなければならない。