2014

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草案<全文>

世界政府研究所日本支部(鈴木俊雄)

Sekai Seifu Kenkyūjo (SUZUKI Toshio)

「草案 新日本国憲法」1
2014年


前文  

これは、日本国憲法である。本憲法は国家の最高法規であり、他のいかなる法も条約も本憲法に従わない場合は無効である。日本国籍を持つ者は、何人も本憲法を尊重し、従わなければならない。

我々の社会をより良くするために何をするべきかを考えるとき、何を最優先すべきかという明確で確固たる基準を持たなければならない。何を最優先すべきかは、時代の状況により異なる。原始時代には世界平和と地球の環境の保全を考えることは意味がなかったが、地域の人々の幸福を最優先で考えなければならなかったと思われる。封建時代には世界平和と環境の保全を考えることは無意味であったが、各国の人々の平和と幸福を最優先で考えなければならなかったと思われる。21世紀の現在では、各国の利益を考える前に世界平和と環境の保全を考えなければならない。すなわち、我々は各国の利益を最優先で考えてはならない。本憲法は、我々は世界全体のあるいは社会全体の利益を最優先しなければならないという思想にもとづいて書かれたものである。世界がよくなれば、それぞれの国がよくなる。それぞれの国がよくなれば、我々の生活がよくなる。それ故、世界全体の利益を考えなければならない。現代では、世界全体のあるいは社会全体の利益について考えるとき、戦争の終結、貧困の撲滅、そして環境の保全が最も重要な事項であると思われる。我々は、いかにしてこれらの事項に取り組むかを考えなければならない。

世界あるいは我々の社会において、私的な生活を除けば、我々の幸福にとって最も重要な要素は政治経済体制である。最高の政治経済体制は政教分離のもとで可能である。ここで、政教分離とは宗教を信仰してはならないという事を意味しない。我々は、宗教を信仰せずに幸福な生活を営むことはできない。しかし、人々の宗教は人ごとに異なる。それ故、社会の政治経済体制のもとで、すべての宗教は許され尊重されなければならない。これが、政治と宗教が分離されなければならない理由である。しかし、宗教が政治に慣習的に影響を与えることは避けられない。政治と宗教の分離とは、特定の宗教団体に、政府の予算が配分されてはならず政府の特定の便宜が与えられてはならないということである。宗教団体は、政教分離の体制のもとで存在することができる。すなわち、宗教団体は信者の寄付で維持される。したがって、宗教は法的な権力はなくとも慣習的に政治に影響を与えることができる。

政治的権力は、立法、行政、司法の三権に分離される。これらの政治的権力において、行政の最高責任者である大統領は、政治において最も重要なそして最も責任ある官吏である。人々は、大統領を敬い従わなければならない。これは、国家の民主的政治体制の基本構造である。

本憲法は、国際社会の一員であり、世界全体あるいは社会全体の利益を最優先にする人々のための憲法である。すなわち、これは世界市民の憲法である。世界市民はすべての人種からなり、宗教はいかなる人々にとっても世界市民であることの障害にはならない。ここに、世界社会の一員であるすなわち世界市民である人々のための日本国憲法を定める。

第1章 主権

第1条〔日本国の主権者〕
日本国の主権者は、日本国の国籍を持つ者である。この権利、主権、は譲渡することができない。

第2条〔主権の行使〕
日本国の国籍を持つ者は、国会議員および地方議会議員の選挙および憲法改正のための国民投票を通して主権を行使する。日本国の国籍を持たない者は、国会議員および地方議会議員の選挙で、立候補する権利も投票する権利も持たず、また、国民投票で投票する権利も持たない。

第3条〔国籍および領土〕
日本国の国籍および領土は、法律で定める。

第2章 国際関係

第4条〔国際社会における位置〕
すべての日本国民は、日本は独立国であると同時に国際社会の一員であることを理解しなければならない。そして、すべての日本国民は、正義、人々の幸福、世界全体の利益および平和を理解し尊重しなければならない。

第5条〔国際政策〕
日本国の基本的な国際政策は、世界民主主義を確立し維持することである。日本国政府は、世界議会を含む、民主的な国際組織を設立し維持するよう努力しなければならない。

第3章 国民の義務および権利

第6条〔安全を維持する義務〕
すべての国民は、行政の最高責任者である大統領を尊重し従い、日本の安全を不断の努力で維持する義務を負う。義務を果たした後に、本憲法により保障されたあるいは法律により規定された権利を持つことができる。

第7条〔納税の義務〕
すべての国民は、法律に従い税を納める義務がある。

第8条〔教育を受ける義務と権利〕
すべての国民は、法律に従い能力に応じた教育を受ける義務および権利がある。
2 すべての国民は、その保護下にある子女に、普通教育を受けさせる義務がある。
3 義務教育は、無償とする。

第9条〔勤労の義務および権利〕
すべての国民は、働く義務および権利がある。

第10条〔人間として生きる権利〕
すべての国民は、人間として幸せに生きる権利があり、この権利は譲渡できない。
2 生活のすべての領域において、国はすべての国民の幸福を促進する義務がある。

第11条〔法のもとの平等〕
すべての国民は、人種、信仰、性別、社会的地位、出自、教育、資産あるいは所得にかかわらず、法のもとに平等である。

第12条〔宗教の自由〕
宗教の自由は、保障される。国のいかなる法も、宗教に関しては平等でなければならない。

第13条〔思想および良心の自由〕
思想および良心の自由は、保障される。

第14条〔集会および結社の自由〕
集会および結社の自由は、保障される。

第15条〔表現の自由〕
言論、出版、および他のすべての表現の自由は、保障される。

第16条〔学問の自由〕
学問の自由は、保障される。

第17条〔婚姻〕
婚姻は、平等の権利を持つ両性の同意に基づかなければならない。
2 配偶者の選択、財産権、相続、離婚、および婚姻と家族に関する他の事柄に関しては、個人の尊厳と両性の本質的な平等に立脚して、法が制定されなければならない。

第18条〔移民および国籍変更の自由〕
外国への移民および国籍を変更する自由は、保障される。

第19条〔労働者の権利〕
労働者の集会する権利および団体的に交渉する権利は、保障される。

第20条〔私有財産の権利〕
すべての国民は、私有財産を所有する権利がある。財産権は、法律で定める。
2 私有財産は、公共のために用いるために、政府が保障するという条件で、政府により接収できる。

第21条〔公務員を選定し解任する権利、公務員の役割、普通選挙権、および秘密投票〕
すべての国民は、法律で定められた手続きに従い、国会議員、地方議会議員、地方公共団体の首長、および法律で定められた他の公務員を選定し解任する、譲ることのできない権利を持つ。
2 すべての公務員は社会全体の奉仕者であって、社会の一部の奉仕者であってはならない。
3 公務員の選挙においては、成人者による普通選挙が保障されている。
4 すべての選挙において、投票の秘密は犯してはならない。選挙人は、その選択について、公的にも私的にも、責任を問われない。

第22条〔裁判を受ける権利〕
何人も、裁判を受ける権利を奪われない。

第23条〔請願の権利〕
何人も損害の補償、公務員の解任、法律の制定あるいは廃止あるいは改正、およびそのほかの事柄のために平穏に請願する権利を持つ。何人も、そのような請願をしたために差別されることはない。

第24条〔国または公共団体に対して保障を請求する権利〕
何人も、公務員の不法行為により損害を受けた場合、法律に従い、国あるいは公共団体に保障を請求する訴訟を起こす権利を持つ。

第25条〔罪および罰〕
何人も、罪を犯した者は、法律で定められた手続きを経て、罰せられなければならない。
2 何人も、法律で定められた手続によらず、その生命あるいは自由を奪われることはなく、その他の刑罰も科せられない。

第26条〔逮捕の手続き〕
何人も、現行犯の場合以外は、裁判官が発行した理由を明記した令状がなければ逮捕されない。

第27条〔住居捜索および所有物の押収〕
裁判官が発行した理由を明記した令状がなければ、前条に従い逮捕される場合を除いては、何人の住居も捜索されず所持品も押収されない。

第28条〔刑事被告人の権利〕
すべての刑事事件において、被告人は、公平な裁判所の迅速で公開の裁判を受ける権利を持つ。
2 被告人は、すべての証人に対して審問する機会を十分に与えられ、公費で自己のために強制的手続きにより証人を得る権利を持つ。
3 被告人は、いかなる場合でも、資格を持つ弁護人の助力を得ることができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを付する。

第29条〔拷問の禁止〕
公務員による拷問および残虐な刑罰は、絶対に禁止する。

第30条〔強制された自白の無効〕
何人も、自己に不利な証言を強制されない。
2 拷問による自白は無効である。
3 何人も、唯一の証拠が本人の自白である場合は、有罪とされない。

第31条〔遡及処罰および二重処罰禁止〕
何人も、実行のときに適法であった行為あるいはすでに無罪とされた行為については、刑事上の責任を問われない。
2 何人も、同一の犯罪については、重ねて刑事上の責任を問われない。

第32条〔刑事保障を求める権利〕
何人も、逮捕されたのちに無罪の判決を受けたときは、法律に従い国にその刑事保障を求めることができる。

第4章 立法

第33条〔立法権〕
立法権は、本憲法で規定された場合を除いて、国会に属する。

第34条〔二院制議会〕
国会は、国民院および世界市民院からなる。
2 法案は、本憲法で規定されている場合を除いて、どちらの院にも提出できる。

第35条〔両院の組織〕
国会の両院の議員は、国民により選出される。
2 各院の議員数は、法律で定める。

第36条〔議員および選挙人の資格〕
両院の議員およびその選挙人は日本の国籍を持っていなければならず、年齢は法律で定める。ただし、人種、信仰、性別、社会的地位、出自、教育、資産あるいは所得による差別があってはならない。

第37条〔国民院議員の任期〕
国民院議員の任期は、四年とする。
2 大統領は、必要があれば、国民院を任期満了以前に解散できる。

第38条〔世界市民院議員の任期〕
世界市民院議員の任期は、六年とし、三年ごとに議員の半数を改選する。

第39条〔選挙に関する事項〕
選挙区、投票の方法、その他両院の議員の選挙に関する事項は、法律で定める。

第40条〔通常国会の召集〕
国会の両院の通常国会は、毎年一回、大統領が召集する。
2 国会の会期は、法律で定める。
3 国会は、議員の三分の一以上が出席したときに、会議を開き議決することができる。

第41条〔臨時国会〕
大統領は、両院の臨時国会を召集することができる。
2 どちらかの院の議員の四分の一以上が要求するとき、大統領は臨時国会を召集しなければならない。
3 国会の会期は、法律で定める。
4 国会は、議員の三分の一以上が出席したときに、会議を開き議決することができる。

第42条役員の選挙、各院の規則、および議員の除名〕
各院は、その議長その他の役員を選出する。
2 各院は、会議、内部規律、および規律を乱す行為に対する議員の処罰に関する規則を定める。
3 各院において、出席議員の三分の二以上が議員の除名を議決したときは、その議員は国会議員の議席を失う。

第43条〔議決〕
議案は、本憲法に定めのある場合を除いては、両院において、出席議員の過半数で可決され、可否同数のときは、議長の決するところによる。
2 投票は、ほかの議員に委任できない。
3 議案は、この憲法によって規定される場合を除いて、両院において可決されたとき、法律となる。

第44条〔議決における国民院の優越〕
国民院で可決された議案が世界市民院で否決された場合、国民院が出席議員の三分の二以上で再び可決したときは、その議案は法律となる。
2 各院の議決が異なる場合、国民院は、法律に従い両院の協議会を開くことができる。
3 国民院で議案が可決され、世界市民院が、国会休会中の日を除いて、六十日以内に結論を出せないとき、国民院は、世界市民院はその議案を否決したとみなすことができる。

第45条〔予算案に関する国民院の優越〕
予算案は、先に国民院に提出しなければならない。
2 以下のいずれの場合も、国民院の議決は国会の議決となる。
一 国民院が予算案を可決したが、世界市民院で否決され、両院の協議会を開いても意見が一致しない。
二 国民院で可決された予算案が、世界市民院において、国会休会中の日を除いて三十日以内に可決されない。

第46条〔条約の批准に関する国民院の優越〕
前条第二項および三項は、国会による条約の批准にも適用される。

第47条〔国民院の解散〕
国民院が解散されたとき、その日から四十日以内に、総選挙が行われなければならず、選挙の日から三十日以内に、国会が召集されなければならない。
2 国民院が解散されたとき、世界市民院は同時に閉会される。ただし、国に緊急の必要があるときは、大統領は世界市民院の緊急集会を召集することができる。
3 上の緊急集会でとられた措置は、臨時のものであり、国会開催から十日以内にその措置が国民院によって承認されなければ、それらの措置は効力を失う。

第48条〔会議および議事録の公開〕
各院の会議は、公開しなければならない。ただし、出席している議員の三分の二以上が議決すれば、秘密会議を開くことができる。
2 各院は、議事録を作成し、公開しなければならない。ただし、出席している議員の三分の二以上がそれを秘密にするという議決をすれば、秘密にできる。
3 出席議員の五分の一の要求があれば、いかなる事項についての投票も議事録に記録されなければならない。

第49条〔両院議員兼職の禁止〕
何人も、同時に両院の議員となることはできない。

第50条〔国会議員への報酬〕
両院の議員は、法律により、国庫からふさわしい額の報酬を受け取る。

第51条〔国会議員の不逮捕特権〕
両院の議員は、法律で定められた場合を除き、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その院の要求があれば、会期中は釈放される。

第52条〔議員の免責特権〕
両院の議員は院内で行った演説、討論、およびに表決について、院外で責任を問われない。

第53条〔国政に関する調査権〕
各院は、国政に関して調査を行い、この調査において、証人の出頭および証言、および記録の提出を要求することができる。

第54条〔大統領および他の国務大臣の両院への出席の権利と義務〕
大統領その他の国務大臣は、いずれかの院の議員であるかないかにかかわらず、議案につて発言するために、いつでも、どちらの院にも出席することができる。
2 院が、大統領および他の国務大臣が出席しなければならないと議決したときは、答弁または説明のために出席しなければならない。

第55条〔弾劾裁判所〕
国会は、解任の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両院の議員からなる弾劾裁判所を設ける。
2 弾劾に関する事項は、法律で定める。

第5章 行政

第56条〔最高権威〕
行政の最高権威は、大統領である。大統領は文民でなければならない。就任に際しては、大統領は、使命を果たすために、憲法に従い最善を尽くすことを国民に誓わなければならない。

第57条〔大統領の選挙と資格〕
大統領は、法律で定める手続きに従い、国民により直接選出される。
2 大統領は日本で出生していなければならず、日本国籍を保持していなければならない。
3 大統領は、三十歳以上でなければならない。

第58条〔大統領の任期〕
大統領の任期は、四年とする。大統領は、二期のみ選出されることができる。

第59条〔大統領の職務〕
大統領は、以下の職務を果たす。
一 一般的な行政職務を遂行する。
二 法律を忠実に執行し、国務を遂行する。
三 さまざまな行政支所を管理し監督する。
四 国会に法案を提出する。
五 条約を締結する。ただし、事前に、あるいは状況により、事後に、国会の承認を得なければならない。
六 一般的な国事および国際関係について国会に報告する。
七 予算案を準備し、国会に提出する。
八 政府政令を制定する。ただし、そのような政府政令は、法律で承認されなければ、罰則規定を含んでいてはならない。
九 必要に応じて、国民院を解散する。
十 恩赦、権利復活、および他の関連事項について決定する。

第60条〔副大統領〕
副大統領は、大統領によって任命され、かつ解任される。
2 副大統領は、大統領がその職務を果たすことができないとき、大統領として職務を果たす。副大統領がその職務を果たすことができないとき、国務大臣の一人が大統領として職務を果たす。大統領として職務を果たす少なくとも三人の国務大臣とその大臣の補欠の順位は、大統領によって指定される。
3 大統領が死亡したときは、副大統領が大統領に就任し、副大統領および他の補欠を任命する。新大統領の任期は、前大統領の残りの任期とする。

第61条〔国務大臣および省〕
大統領は各省の国務大臣を任命し、解任する。国務大臣の過半数は国会議員でなければならず、国務大臣は文民でなければならない。
2 国務大臣は、法律で定められた場合を除き、省のいかなる役人をも任命し、かつ解任し、省を統括する。
3 省およびそれらの機能は、法律で定める。
4 大統領は、裁判所の裁判官を除き、省の役人を含む政府のすべての役人を任命しかつ解任することができる。この権限は、国務大臣の権限を上回り、いかなる法律もこの権限を否定することはできない。

第62条〔国防軍〕
日本は、独自の国防軍を保有し、国防軍の構成は法律で定める。
2 大統領は、国防軍の最高司令官であり、国防軍のいかなる人員をも任命し、かつ解任することができる。 

第63条〔調査権〕
大統領は、調査が公開されるという条件のもとで、政府の各官庁の政策および国のすべての人々について調査を遂行する権限を持つ。
2 大統領は、会議が公開されるという条件のもとで、大統領が召集する会議に国民の出席と証言を要求し、かつ記録の提出を要求する権限を持つ。

第64条〔法律および政令への署名〕
すべての法律と政令は、主任の国務大臣が署名し、大統領が連署しなければならない。

第65条〔国務大臣の特権〕
国務大臣は、大統領の同意なしには、訴追されない。ただし、これにより、訴追の権利は害されない。

第66条〔大統領の辞任〕
大統領は、必要であると考えるときは、大統領の職を辞任することができる。
2 この憲法で規定された期間内に予算案が通過しないときは、大統領は、辞任しなければならない。
3 新大統領の選挙は、辞任から四十日以内に実施されなければならない。新大統領の任期は、四年とする。

第67条〔弾劾〕
大統領の弾劾の過程は、両院において、弾劾のための国民投票を実施するという議決を出席議員の三分の二以上がしたとき、開始される。
2 国民投票の票の過半数が大統領の解任を支持したとき、大統領はその地位から解任される。国民投票の過程は、法律で定める。
3 解任の後、副大統領が大統領になり、新大統領の選挙は、辞任から四十日以内に実施されなければならない。新大統領の任期は、四年とする。

第68条〔拒否権〕
大統領は、国会の議決を拒否することができる。議決が拒否されたとき、両院において、出席議員の三分の二以上により、拒否された議決が可決されれば、その議決は有効となる。

第6章 司法

第69条司法権〕
すべての司法権は、最高裁判所および他の下級裁判所に属する。ここにおいて、下級裁判所は、法律に従い設置される。
2 最高裁判所は、あらゆる法律、条約、命令、規則、および公的な措置の合憲性を決定する権限を持つ終審裁判所である。
3 臨時法廷は、国会が本憲法にしたがい弾劾裁判所を設ける場合を除いて、設置することはできない。
4 行政上の組織あるいは機関は、終審として裁判を行うことができない。
5 すべての裁判官は、その良心において独立であり、本憲法と法律にのみ拘束される。

第70条〔最高裁判所の規則制定権〕
最高裁判所は、裁判の手続き、弁護士に関する事項、裁判所の内部規律、司法事務処理に関する規則を制定する権限を持つ。
2 検察官、弁護士その他の裁判に関係する者は、最高裁判所の定める規則に従わなければならない。
3 最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を制定する権限を、下級裁判所に委任することができる。

第71条〔最高裁判所の裁判官〕
最高裁判所の裁判官は、長官および法律で定める員数のその他の裁判官で構成する。最高裁判所の長官およびその他の裁判官は、大統領に任命される。
2 最高裁判所の裁判官の任期に制限はない。ただし、最高裁判所の裁判官は、法律で定める年齢に達したときに退官する。
3 最高裁判所の裁判官は、定期的に相当額の報酬を受け取り、その報酬は、在任中、減額することができない。

第72条〔下級裁判所の裁判官〕
下級裁判所の裁判官は、最高裁判所から提出された名簿から、大統領が任命する。
2 下級裁判所の裁判官は、任期を十年とし、再任されることができ、法律で定める年齢に達したとき退官する。
3 下級裁判所の裁判官は、定期的に相当額の報酬を受け取り、その報酬は、在任中、減額することができない。

第73条〔裁判官の身分の保障、および裁判官の弾劾〕
裁判官は、以下の手続きによる以外は、弾劾されない。
一 すべての裁判官は、国会の両院の議員からなる弾劾裁判所が議決したとき、弾劾される。
二 すべての裁判官は、裁判により、精神的または肉体的に職務を果たすことができないという判決を下されたとき、解任される。
三 最高裁判所の裁判官は、国民投票により弾劾され得る。投票者の過半数が解任を支持すれば、その裁判官は解任される。国民投票の手続きは、法律で定める。
2 いかなる行政上の組織または機関も、裁判官に対する懲戒処分を行うことはできない。

第74条〔公開裁判〕
裁判は、国民に公開されなければならない。
2裁判所が、裁判官の全員一致で、公開は公共の秩序または道徳を害すると決定したときは、非公開で行うことができる。ただし、政治犯罪の事件、出版に関する事件、本憲法で保障された国民の権利に関する事件の場合は、公開されなければならない。

第7章 財政

第75条〔財政の原則〕
国の財政を管理する権限は、国会の議決に基づいて行使しなければならない。

第76条〔課税〕
法律に従わずに、新たな租税を課すこと、および現行の租税を変更することはできない。

第77条〔国費の支出および国家債務〕
国費の支出および国家債務の創出は、国会の認可のもとに可能である。

第78条〔予算〕
大統領は、毎会計年度の予算案を作成し国会に提出し、審議および議決を経なければならない。
2 予算案が当該会計年度開始前に国会で議決されなかったとき、大統領は、三カ月以内かつ前年度の予算の四分の一以内で、法律に従い必要な支出をすることができる。予算案が、三カ月以内かつ前年度の予算の四分の一以内の支出で、可決されなかった場合、大統領は辞任しなければならない。
3 予算案が議決されずに支出がなされたとき、事後に国会に報告されなければならない。

第79条〔予備費〕
予期し得ない予算の不足にあてるために、国会で承認された予備費を、大統領の責任において支出することができる。
2 予備費からの支出は、国会に報告しなければならない。

第80条〔公の資金と資産の利用の制限〕
公金または他の公の資産は、いかなる宗教的な組織、あるいは、公の支配に属しないいかなる慈善的あるいは教育的な組織に対して支出してはならない。

第81条〔決算の提出〕
国の歳入歳出の決算は毎年会計検査院によって検査され、次の会計年度に大統領はその決算を国会に提出しなければならない。
2 会計検査院の組織および権限は法律で定める。

第82条〔財政状況の報告〕
大統領は、少なくとも毎年一回、国の財政状況について国会および国民に報告しなければならない。

第8章 地方自治

第83条〔地方自治の原則〕
地方自治体の組織は、法律で定める。

第84条〔地方議会および選挙〕
地方公共団体は、法律に従い地方議会を開設する。
2 すべての地方公共団体の首長、それらの議会の議員、および法律で定められた他の地方公務員は、当該地域社会の住民が直接投票により選挙する。

第85条〔地方公共団体の権限〕
地方公共団体は、その資産を管理し、事務を処理し、および行政を執行する権限を持ち、法律の範囲内で独自の条例を制定する権限を持つ。
2 地方税は、法律の範囲内で条例を制定することによって課税できる。

第9章 改正およびその他

第86条〔改正〕
本憲法の改正は、国会のどちらの院からも発議できる。
2 改正案は、両院において、各院の全議員の三分の二以上の議員が改正を支持したとき可決される。可決された改正案は、法律で定められた手続きに従い、国民投票に付され、投票の過半数が改正を支持するとき、憲法は改正される。
3 憲法が改正されたとき、大統領は憲法に対して忠誠を誓い、憲法は大統領によって直ちに公布される。
4 改正された憲法は、公布から六ヵ月後に施行される。
5 初代大統領が選挙されていないときは、総理大臣が大統領の務めを果たす。

第87条〔既存の法律の有効性〕
前憲法のもとで存在したすべての法律は、改正されない限り有効とする。
2 新しい法律は、新しい憲法に従わなければならない。

第88条〔国会と地方議会の議員〕
新しい憲法のもとでは、衆議院議員は国民院議員となり、参議院議員は世界市民院議員となる。
2 新しい憲法のもとでは、地方議会の議員であった者は、同じ議会の議員となる。

第89条〔既存の法律と新憲法の矛盾〕
国際的および国内的な事項において、前憲法のもとで存在した法律が新憲法と矛盾するときは、大統領は、新憲法に従い政策を決定できる。
2 地方の事項において、前憲法のもとで存在した法律が新憲法と矛盾するときは、当該地方公共団体の首長は、新憲法に従い政策を決定できる。
3 大統領および首長により、既存の法律に従わずに新憲法に従いなされた決定は、事後に直ちに、国会または地方議会に報告されなければならない。