環境権

Environmental Right

国民の権利と義務を規定している第3章は、憲法が保障する人権の種類がリストされているため、「人権カタログ」とも呼ばれる。憲法制定時には認識されていなかった新しい概念による人権が憲法で十分に保障されるか否か、憲法を改正し新たに規定すべきかが争点になってきた。憲法改正の是非において主に議論される「新しい人権」は「プライバシー権」、「知る権利」、そして「環境権」である。いずれも背景には、都市化や情報化などによる社会の変化を受けて、これらの人権が従来の人権意識では十分に守ることができないのではないかという問題意識がある。一方で、いずれの「新しい人権」も、既存の条文が根拠たりえるという立場から憲法改正の必要性を退ける立場もある。

「環境権」は大気・水・日照・静穏などの良好な環境を享受する権利であるが、人権として認識されるようになった背景には高度成長の弊害として工業開発による環境破壊を原因とする公害、新幹線や空港の拡張による騒音の問題などがあった。沖縄では、米軍基地の集中と自衛隊の配備による騒音や埋め立てなどによって環境破壊が起きており、県民の環境権を侵害しているという訴えがある。日本国憲法は「環境権」を明文化していないが、日本国憲法第13条の「幸福追求権」及び第25条の「生存権」が根拠になるとされる。