皇位継承
Imperial Succession
皇位継承者の不足を契機に皇室典範の改正が議論されるようになった。皇室典範は皇位継承資格は皇統に属する男系男子と定めており、皇位継承者の不足解消のため、特に「女性天皇」あるは「女系(母系)天皇」の是非が焦点となってきた。皇室典範は、日本国憲法第一章「天皇」を構成する第二条および第五条に基づき、皇位継承に関する事項を中心に天皇と皇室について詳細を規定している。2000年以降の世論は若年層を中心に女性天皇誕生への国民の高い支持を示しつつある。女系天皇についても令和以降の世論調査で7割(NHK、2019)以上の支持を得ている。女性天皇・女系天皇への支持上昇の背景には皇位継承者の不足だけでなく、日本社会における女性の権利・地位の向上やフェミニズムの視点から、男系男子による家の継承という伝統的な家父長制への違和感の広がりも指摘される。対して、保守派には初代神武天皇より男系(父系)でたどることのできる皇位継承、いわゆる万世一系の維持の観点などから抵抗が根強く、男系による皇位継承維持のために旧皇族の皇籍復帰を提案する声もある。なお女性天皇は歴史的に複数存在し、万世一系を重視する意見の中には、女性天皇には賛成でも女系(母系)天皇には反対とする立場もある。
皇位継承問題は2004年に時の小泉純一郎内閣が私的諮問機関「皇室典範に関する有識者会議」を設置、議論が本格化した。当時の第125代天皇・明仁の第2皇男子にあたる秋篠宮文仁親王の誕生以降は約40年に亘り、皇族には当時の皇太子(後の第126第天皇・徳仁)の皇子となる敬宮愛子内親王など女子の誕生はあったものの、男子の誕生がなかった。有識者会議は2005年に女性天皇および女系(母系)天皇を認める報告書をまとめた。同報告書に沿った皇室典範改正案も準備され、敬宮愛子内親王による女性天皇誕生とそのための皇室典範の改正に積極的な論調が生まれた。しかし、2006年に秋篠宮文仁親王に悠仁親王が誕生し、女性天皇・女系天皇の議論は事実上棚げされることになった。なお、皇室典範は「天皇の退位」について明記しておらず、2017年に代125代天皇・明仁の退位にあたり改正された。皇室典範の本則の改正ではなかったものの、附則が加えられ、天皇の退位等に関して規定した特例法が皇室典範と「一体を成すものである」記載された(附則4項)。憲政史上初めて、皇位継承に関して皇室典範に変更が加えられた。
皇位継承者のみならず皇族全体が高齢化と縮小の傾向にあり、公務や祭祀の負担増及び継続の困難が懸念されている。この問題の解決のため検討されているのが、女性皇族を当主とする女性宮家の創設である。皇室典範は女性皇族が天皇及び皇族以外の男子と婚姻した場合の臣籍降嫁を定めている(第12条)。この点を改正し、婚姻後も女性皇族を皇族に止めようという案である。
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